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松の間

第1章 細身の子*一松


side.一松


今この部屋にいるのは僕、一松と彼女の一之瀬ちゃんの二人
ちゃぶ台に隣り合わせて座るも、会話はなく少し寂しさを覚える

一「・・・ねぇ、なんか食べる?小腹空いた」

「いい、いらない」

冷たく突き放すように言葉が紡がれた
普段なら喜ぶのに、そう心の中で一人ごちる

一「甘いのもあるけど」

それでも一之瀬の態度が気になって食い下がると

「いらないってば!ダイエットしたいの!!」

一「・・・は?」

突然の怒号に驚きつつ、ダイエットという言葉に疑問が浮かぶ

一「何でダイエットなんてするの」

「一松君がこないだテレビ見ながら、やっぱり細身の子はいいなって言ってたから」

と、一之瀬は体育座りのように膝をたて、そこに顎を乗せながらブチブチと言う

こないだのテレビ、細身の子
この二つで思いつくのは

一「あぁ、あの黒ブチの猫ね」

「・・・は?」

今度は一之瀬が聞き返す

「え、猫・・・なの?」

一「うん、スラッとして綺麗な猫だった」

思い出すと顔が綻ぶのが、一松自身にも分かった
一之瀬はというと

「嘘でしょ、猫だったなんて。ダイエットしなきゃって必死だったのに」

なんてさらに背中を丸めてつぶやいている
そんな一之瀬を後ろから抱きしめる

一「一之瀬ちゃんはそのままでいいよ」

耳元で囁けば、みるみる内に赤くなる頬と耳
あぁ、可愛いなぁなんて思ってもなかなか言えない

だけど

一「どんな一之瀬ちゃんも好きだから」

たまにはこうして言葉にしなくちゃな

「・・・私も、一松君好き」

こんな風に照れながらも必死に愛を囁く君がみられるから


静かに振り向く一之瀬にそっと唇を近づける
この穏やかな日々がずっと続くように、願いを込めながら




-fin-
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