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花と月の物語

第3章 子狐


「一応癒香梨さんの地だけど端のほうだから多いな」

林のなかの一軒家に向かっていく低級妖怪を斬りながらあずさは呟いた

「でもなぁ…戻ってもらうにはあの子たちの前に現れなきゃなんないし…」

どうしたものかとあずさは自分で作った林のなかとは思えないような真新しい一軒家を眺めた
いや 作ったのではない
変えたのだ
あずさという九尾狐は『別のものに変える能力』を持っていた
指パッチンするだけで何でも変えることができた
石を金に 草を野菜に 紙を本に
別に似たようなものに変えずとも石を野菜に変えることも草を本に変えることも紙を金に変えることもできる
今回の一軒家だって葉を二階建ての新築に変えた

何でもできるようなこの能力だが欠点はどんな能力にも必ずある
あずさの能力には『無を有に変えることはできない』と『変えたものはもとに戻らない』という欠点があった
そのせいで帰らぬ者となった者がいた…

「そこらへんは暗いからまたの機会にね」
ちょっナレーションに入ってこないで!
…ゴホン まぁそんなわけであずさはその能力をあまり生きた者に使わないことを決めていた

「お兄ちゃんちゃんと留守番しててね」
「はいはい」

一軒家から奈月が出てきた
小学校を出たばかりなので幼い顔立ちをしている
今から出掛けるようで小さな手提げかばんを肩にかけ何故かどうしても直らない寝癖(いわゆるアホ毛)以外はその赤みがかった茶色い髪を綺麗にセットしていた
玄関では眠たそうにあくびをしながら手を振る癒月
女性と間違えそうな位の女顔で高校生だというのに弟の奈月よりも背がひく…
「言うな(怒)」
だからナレーションに入ってこないでってば!

…もう日も高く上っているというのにまだ寝起きなのだろうか
闇のように黒い髪はくせっ毛もあるが寝癖でボサボサ(遺伝なのかこちらもアホ毛がある)で服はプライベートゾーンをかろうじて隠すくらいの大きめのシャツ一枚(下着は着ている)
とても外には出られない格好だ

「じゃあ行ってきます」
「僕も行かなきゃ」

あずさは密かに奈月を追いかける
とある約束のために





「えーっと…今日はポテトサラダとハンバーグにしたいから
ジャガイモとニンジンとキュウリと玉ねぎください」

代金を支払うと帰路へつく
自然とため息が出る

「…早く夏休みが終わんないかなぁ」
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