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花と月の物語

第2章 始まり


「こんなところで駄弁っててもしゃーねーし
とりあえず家は雨風しのげれば良いか?」
「ふぇ?う うん…」
「じゃ 行くか」

そういうと癒月はスタスタと歩き始めた

「ちょっお兄ちゃんどこにいくの!?」
「新居」

"新居"と呼ばれた場所は癒月たちの家から5kmほど離れた林のなかにあった
まだ太陽が高い位置にあると言うのにその林は薄暗く 夏とは思えないほど肌寒い
まるでさっきまでいた街中とは別の世界のように思えた

「お兄ちゃんこんなところにお家なんてあるの?」
「ああ 昨日見つけた」
癒月の言葉に奈月は不安しか感じなかったが家がないこの状況を解決できるなら何でも良かった
寧ろ兄を慕っている奈月としてはこれから癒月と二人暮らしと言う事実に心を踊らせていた

「…着いた 此処が俺たちの新しい家だ」

そこにはつい最近建てられたかのような二階建ての一軒家がそびえ立っていた
しかし林のなかに建っているため落ち葉が積もり それがその一軒家に誰もいないことを証明していた

「ねぇお兄ちゃん本当に此処に住むの?
どう見ても他人の家だし勝手に上がるのは駄目なんじゃ…」
「なつ これ読んでみろ」
癒月はその家の表札を指差している
一文字だけ難しい漢字があったがその文字が"ゆ"と読めることに気付くまでそう時間はかからなかった
"新居"にかかった綺麗な表札に掘られた文字に奈月は我が目を疑った

「きさらぎ…ゆづき…なつき…」

自分たちの名前だった
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