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君の音、僕の音。〜梶裕貴〜

第3章 Episode2 #悪夢


暗い暗い闇の中。
どれだけ歩いたのか、どこに向かっているのか、全くわからない。今の私に足があるのかも、手があるのかも分からない。

それでも歩いている。
暗い闇の中なのに、前が見える。

そんな、矛盾した場所。

『誰か………誰かいませんか……』

私は誰?
私は私で合ってるの?
そもそも、私は存在しているの?

ずっとずっと歩き続ける。
どれだけ歩いても光が見えない。

『ひゃあっ!?』

あるのかも分からない足が何かに掴まれる。すぐに分かった。

闇は私を呑み込もうとしている。

私は必死に足掻いた。
この闇に呑み込まれれば、おそらく一生私は私でいられなくなる。

おかしな話だ。
私は私なのかも分からないのに、私が私でいられなくなることを恐れている。

ギリギリの所で私を捕らえていたものから離れる。どこを見ても闇。私を掴んだのも、紛れもないその一部。そう理解した途端、言いようのない恐怖が私を襲った。

だって、いつまた呑み込まれそうになるか分からないから。

私は必死に走り続けた。
方向感覚のないこの場所をちゃんと走って前に進めているのかは分からない。もしかしたら、ずっと同じ場所をくるくる回っているのかもしれない。それでも、じっとしていられなかった。

そんな時だった。
何の希望もない闇の中に、一筋の光が射し込んだ。

『やっと………!』

走るペースを上げた途端、その光がどんどん闇を呑み込んでいき、とうとう辺りに闇はなくなった。

その代わりに私の周りには見たことのない情景が流れていた。
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