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俺のコタンは、あなたの腕

第16章 いつか。絶対。




見られたくないやつの声がする。

「三島。前山。お前らそういう趣味か。はっ!上官さんよぉー、ここに違反者が居るぜぇ。懲罰だ懲罰。」
「尾形!?」
「前山さん!風呂へ逃げるぞ!」

必死に自分を隠そうと俺はもがく。
もがいてもがいて、腕も足も切れて血が滲むのがわかった。

見ないで、見ないで。
これは俺がやりたくてやったんじゃない。

あぁちょうどいいところにきた。
きもちよくして。

「蜂名。俺だよ。尾形だよ。」
「んー!んん!」

見ないで、来ないで。

はなしかけて、きもちいい。
みられるの、きもちいい。
もっと。

「おい。俺だって、大丈夫か?」

触れないで!
フレナイデ!

「フレテ、キモチヨクシテ」

誰だお前。
何言ってんだよ。

「蜂名?」
「キモチヨクシテ!」

大丈夫か?そう言ってまず取ってくれた口の布。
流れ出てくるのは、制止の言葉じゃなかった。
どこかに潜んでいた俺の本能が、跳びはねる。

「マモッテ。オレヲイッショウ、キモチヨクシテ。オレモ、オマエヲマモルカラ」

守るって何だ。
何を何から守るんだよ。

『面倒だな。しがらみってやつは。』
『しかたねぇだろ。お互いに陸軍じゃ知らねぇ奴ぁいねぇ親を持っちまったんだ。』
『地雷か?俺達は。』
『剥き出しの雷管だよ。』
『それにしちゃ、大事にされてない。』
『そうだなぁ。たまにゃ、俺たちも最後の飯粒みてぇに、優しくされてみたいもんだな。』
『…食われるの?』
『あぁ……それは勘弁。』

そうか。
俺達は互いに守ってたんだ。
傷をなめ合ってた。
親の期待を背負った肩を持ち合い、羨望と嫉妬の剣が刺さる背中を合わせて。

互いに背を合わせ傷を舐めあうことが、俺にとって一番安らぐ場所だったんだ。

「ドコニモイカナイデ」
「はっ。俺もお前も、似たもんだからな。」




「「依存」」


「「俺を見て、俺を認めて」」







(最初のク・セマシテク)


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