第1章 事の始まり
「お疲れ様ー、いやいや今日も良かったよ、三月くん。」
父は今話題のアイドリッシュセブンの和泉三月に夢中だ、彼の司会としての才能はあまりテレビをよく見ない私でもわかるほど大きい。
彼の魅力もわかる、だが誉れ高き久我家の財産を削ってまでスポンサーをやるべきなのか。
確かに視聴率もそこそことれている、しかし久我家がどうしてだ。
「是非今日我が家で食事をしよう、三月くん!」
なんだ、今の言葉は?
何故私が庶民と食卓を共にせねばならない。
「本当ですか⁉︎ぜひ、お願いします!弟も一緒でも良いですか?」
「あぁもちろんだ、蓮、良いよな?」
いいわけないでしょう、父上?
そんなこと言えるわけがない、私には無理だ。
「はい、もちろんです。では家の者に連絡しておきますね。」
「よろしく頼む。」
そういうと父は三月と話し始めた。
いつも父はそうだ、私のことなんか見ていない。
小さい頃だってそうだ、母が死んだ時だって…。