第9章 大切な人
「ど、どうしよう…」
流れは早くなる一方。
(私、このまま流されるのかな)
────ガタッ
「えっ」
音がしたと思ったら、船に手がかかっていた。
(ななっ、なに?!)
サ「はぁ、間に合ったぜ」
水の中から顔を出したサンジ。
「さ、サンジっ!」
ルーシェは、手を引っ張ってサンジを船の上に乗せる。
「大丈夫?!」
サ「あぁ、ルーシェちゃんこそ大丈夫か?」
「うん、、」
サ「そうか、ならよかった…っと」
サンジは、安心した顔になる。
「あのね、サンジ…私、サンジに話したいことがあって」
サ「あぁ、俺もある」
川に流されながらふたりは話をする。
「今日ね、2人のこと断ってきたの……それでね、昨日のぬいぐるみのことはたまたまそこにあって……辛さのあまり…ごめんなさい」
サ「あぁ。俺の方こそごめんな。話聞かなくて…なんか、カッとなっちまったみてぇでな」
「うん…仲直りできてよかった」
ニコッと笑うルーシェに、
ドキッと心臓が跳ね上がるサンジ。
サ「おう…てか、ルーシェちゃん。さっき、“さようなら”って言ったろ。あれ、誰に言ったの?」
「そ、それはその…」
(い、言えない…サンジに言ったなんて言えないっ!!)
サ「まぁ、俺に言ったにせよ。俺らに言ったにせよ…さようならなんてさせねーよ」
ポンポンと、頭をなでるサンジ。
「サンジぃ〜」
ポロポロと涙を流す。
でも、その涙は嬉し涙。
…気づけばさっきより水音が強くなっていた。
サ「っと、やべぇ。滝だ」
「えっ!」
(私達死んじゃうの?)
サ「俺に捕まっとけ…ぜってぇ、離せねぇから。一緒に帰るぞ」
ぎゅっと強くルーシェのことを抱きしめる。
ルーシェも自分の力いっぱい抱きしめた。