第11章 11
座ったばかりの椅子からゆっくりと立ち上がったリアムのお母さんはどこかへ行き、すぐに何かを持って戻ってきた
コトリ、静かに置かれたそれは見覚えのあるもの
「息子が壁外調査に行く前日に、これを持ってきたの」
黄色く小さな花弁をいくつも咲かせるそれはいつかの福寿草
それと
「手紙…ですか?」
「そう、そして私に最後のお願いをしたの」
『もし、帰ってくることが出来なかったら……ノア分隊長に渡して欲しい』
「……え」
「だから、私はこの中は一切見ていないわ
ノアさんあなたに受け取ってもらいたいの
なにが書いてあるのか想像はつくわ、だから、私は息子の最後の願いを叶えてあげたいのよ」
「………わかりました」