第2章 魔王様と彼女
あの日から月日が経ち、Procellarumとしてデビューしてから毎日隼くんはアイドルを続けていた。
「隼くん、そろそろ仕事に行く時間じゃないの?」
「そんな事より小春の淹れた愛情たっぷりの紅茶が飲みたいな…」
昔から必要最低限の働きはしたくない隼くんはアイドルなってからも我が道を歩いていた。
まあ、アイドルになったのは始くんがいたから何だけど…
私は紅茶を用意し、隼くんの前にカップを置くとニコリと笑みを浮かべて私を見た。
「ありがと」
プロセラのメンバーは毎日忙しくしているのに、隼くんだけはいつも同じ。
急ぎもせず、忙しくもせず。
紅茶を飲めば時間がゆっくりと過ぎていく感覚になっていく。
隼くんに流されいつの間にか私も一緒に紅茶を飲んでいた。
「隼、やっぱりここか…遅れるから行くぞ」
「海…もう少しゆっくり紅茶を飲ませて欲しいな」
「お前のゆっくりは信用出来ん」
隼くんは迎えに来た海さんに半ば強引に連れて行かれた。
私は2人を追いかけ見送りに玄関まで降りた。
ツキノ寮の前にはすでに移動用の車が止まっていて、外で待っていたのは黒月さんだった。
隼くんが車に乗り込むと窓が開き、隼くんが顔を見せた。
「仕事があるのはすごく嫌だけど、終わったらすぐに小春の元に帰って来るからね」
「ラジオの収録に行くだけだけどな…」
「ふふっ……。いってらっしゃい」
私は隼くんに手を振ると、2人の乗った車は走って行った。
車が見えなくなると私は寮の中へと戻った。