第22章 魔王様とチョコレート
【隼】
仕事が終わり、寮に帰ると甘い香りがした。
進む度に近づく香りは共有ルームからだった。
「おかえりなさい。お仕事お疲れ様」
「ただいま、小春。なんだか甘い香りに誘われてね…どこからかな?」
辿れば小春から同じ匂いがする。
「小春から甘い香り…」
「バレンタインのチョコレート作ったの」
今日はバレンタインだから…と。
「そういえば今日の現場の差し入れにもあったような…」
冷蔵庫から小春が持ってきたトレーの中にはウサギをモチーフにしたチョコレートが並んでいた。
「グラビの皆はミルクチョコレート。プロセラの皆はホワイトチョコレート。一応黒田と白田をイメージしてみました」
おー!と、皆がチョコレートを覗き込む。
「はい、隼くん」
お皿にのったチョコレートを受け取る。
『はい、隼くんにあげるね。お母さんと作ったの!』
幼い頃の思い出がふと、よみがえる。
あの時と変わらない笑顔。
「ありがとう…小春」