第9章 暴徒
……車で、公安局に戻る最中……。
私は、狡噛さんの顔を見れずにいた……。
いくら、悲しくて疲れていたとはいえ…いくら優しく宥めてくれたとはいえ……。
縋って子供のように泣いてしまったのは、いくらなんでも……。
『…恥ずかしすぎる……。』
「…ん?何か言ったか?」
『い、いえっ!!何でもないです…!!』
「…。
そうか……。」
少し頬が熱を帯びていたので、慌てて別のことを考える。
心なしか、いつもより…狡噛さんの声が優しい気がする。
低くて…穏やかな彼の声に、私は安心感を覚えているのであった……。
…ちらり、と横目で狡噛さんを見ると、窓の方に頬杖をついて景色を眺めているようだった。
…ガラスに写っている彼のその表情は何かを思案しているようで…とても魅力的だ。
……そんな時の彼の横顔は、私は堪らなく気に入っている…。
そうこうしている間に公安局に着いた。
そこから先はお互い無言で、気まずいと思った矢先……。
「あっれ〜?悠ちゃん。コウちゃんに意地悪でもされたの?」
呑気で、優しくて温かいその声は…。
私はさり気なく下げていた顔を上げる。
「うっわ……。暗い顔…。
んもー。コウちゃんってば、悠ちゃんに何したのさ〜。」
「…別に、抱きしめただけだが……。」
「……え゛。」
『こ、狡噛さん。そのことは誰にも言わないって約束してください……っ!!』
思い出してしまい、再び頬が熱を持つ。