第9章 暴徒
『…今回の事件…一体何が……。』
ボソリと吐いた私の独り言に、一緒にいた狡噛さんが答えた……。
「……"槙島聖護"……。」
『……え…?』
「…俺は、今回の事件にも奴が絡んでいると思う。
……あんたは、どう思うんだ?如月監視官。」
『私…は……。』
未だに現実を受け入れられない私は返答に困り俯いてしまう……。
すると、頭に少しの重みと温もりを感じた…。
『あ、あの……?』
狡噛さんが私の頭を撫でているのだ。
困惑した私は狡噛さんを見上げる。
私よりだいぶ高い位置にある彼の顔は、悲しげに見えた。
「……無理に答えなくてもいい。
奴はあんたの知り合いだったからな。考えを聞きたかっただけだ。
…それに、時間はまだたっぷりある。答えを焦る必要は無い。」
『……はい。』
狡噛さんの穏やかな温もりと、その優しさが嬉しかった……。
自然と涙が溢れて頬を伝う……。
『っ……。』
「…我慢、しなくていい。…泣けばいい……泣いていいんだ。
……じゃないと、色相が濁るからな……。」
狡噛さんが私を抱きしめた。
…尚も涙は止まりそうにない。
それどころか、どんどん溢れてくる……。
『っ…う、うぅ……。』
狡噛さんは私を強く、そして優しく抱きしめて私の背を撫でていた……。
……そのまま、しばらく私は彼の優しさに甘え、
彼の胸にすがってそこを涙で濡らした……。
……今、思い返してみると……。
その時の空も、どんよりと重く曇っていた……。
厚い雲で覆われたその空も……
"私と共に…泣いていた……。"