第8章 免罪体質
「……奴は、酷く理性的で、頭の良い人間だ。
あんたは、奴と知り合いだったな。……捕まえられるのか?」
俺が放った言葉は…問いは……掠れて小さく、頼りなく聞こえた。
『……誓います。私が、必ず……
この手で彼を止めます。』
真っ直ぐに俺を見つめて言う監視官。
その眼差しは何処までも真っ直ぐで、迷いのないものだった……。
……もう、1人前の監視官になったんだな。
なんてことを考えつつ
「…良い返事だ。頑張れよ……?」
1つ頷いて返答すると、
『何を言っているんですか。
狡噛さんも…一緒に頑張るんですよ…?』
クスリ、と小さく悪戯じみた笑みを浮かべて言う"如月"……。
「…そうだったな。忘れるところだった。
小さな監視官に気圧されて…な。」
クスリと笑い、茶化して言うと真面目な顔をして如月が言う。
『…あの。小さな…は、結構傷つくんですが……。』
「そんなことで傷つくようなやわなメンタルはしてないだろ?」
『……それはそれで傷つきますよ…?』
「……悪い。」
『本当に思ってます?……笑ってるじゃないですか〜…。』
俺の顔を覗き込んでから言う如月はとても不満げだ。
「…これの原因は如月だからな。あんたが悪いんだよ。」
笑いは尚も止まりそうにない。
『っ……。』
唐突に如月が止まる。
俺は不思議に思い彼女を見つめる。
「…どうした?」
『い、今…"如月"って……。』
「…ああ、今度からはそう呼ばせてもらおうと思っているんだが……。
…嫌か?」
『い、いえ……‼嬉しいですっ!!』
俺が訊ねると嬉しそうに如月が微笑んで言った。
……それが、とても微笑ましかった。
俺の今日中に温かな灯火を灯してくれた。