第11章 逃走
「そんなことより……。
如月、お前…2人きりでいる時くらいは敬語、外せないのか……?
その…一応、付き合っているんだし……。」
最後の方はゴニョゴニョと小さくなっていたが、近くにいる私にははっきりと聞こえた。
……それは、私を動揺させて顔を火照らせるには充分だった…。
『そ、そそっ……‼
そんなことではないです…っ!!
そ、それに公私混同する気は……‼』
反論している途中で、狡噛さんにホットココアを持っていない方……。
つまりは空いていた右手…。
それを絡め取られた。
私より、少しだけ高い体温が心地よく私の心をくすぐる。
「……ダメか…?
…悠……。」
『っ!?』
唐突に下の名前を呼ばれて、私は飲み込もうと口に含んでいたココアを噴き出しそうになったほど…動揺した……。
「…なぁ。……少しくらい、良いだろ…?」
甘く…痺れるような囁きに、私の顔が更に火照って熱を持つ…。
『だ、だだ……っ!!
ダメったらダメです……っ!!』
恥ずかしくなって逃げ出そうともがいてみるも、狡噛さんに抱きしめられ最終的に身動きが取れなくなってしまった…。
背中から回されたたくましい腕に、そっと手を添えた。
耳や首筋にかかる吐息がくすぐったい。
「……。」
『……狡噛さん。』
「…なんだ?」
『…離してください。』
「断る。」
……即答だった。
私は少し怒って声を荒らげる。