第10章 決着
わざとらしく、血が点々と続いている……。
これが、槙島聖護のではなく如月のものであったとしたら…。
俺は、迷うことなく奴を殺すだろう。
…こんなことを考えていたら、既にだいぶ濁っている色相が更に濁ってしまう。
……そんなことになったとしたら…。
執行官としてでも、如月の隣に立つことが出来なくなる…。
それだけは、どうしても嫌だ。
そう考えてから、ふと思った…。
…いつの間にか、こんなにも如月に溺れてしまっていた……。
もう、こんなに……。
後戻りできないところまで…。
「コウちゃん…?
聞いてる……?」
縢の声で俺は現実に引き戻された。
「……。
すまない。聞いていなかった…。なんだ?」
「だからさ、この血。
……罠だったら、どうする…?」
「…罠……?」
「そう。
悠ちゃんを誘拐するために邪魔な俺らを消すための、罠…。」
「…まぁ、おそらくはそうだろうな。
……だが、如月があいつの手中にある以上、罠であったとしても俺は行く。」
「……俺も、同感。」
2人で歩きながらそんなことを話した。
その場の雰囲気は重々しく、暗い。
如月の身を心配して…だろうが、
その重々しさが妙に気分を重くさせた……。
……もし、
俺の推測が間違っていたら……。
……もし、
既に如月が殺されていたとしたら…?
俺は今まで感じたことのない恐怖に顔を顰めた……。