第9章 暴徒
Side of 縢
…そこにいた数十人あまりの人達を拘束し終わっても、悠ちゃんは帰ってこなかった……。
「…悠ちゃん、帰ってこないね……。」
「…そうだな。」
「…もしかして、悠ちゃんに何かあっ……」
「っ……‼」
俺が話してる途中でコウちゃんが何処か1点を見つめる……。
その表情は険しく、怒っているようにも見えた……。
「こ…コウちゃん…?どうし…」
"どうしたの?"と、訊ねようとしてコウちゃんの視線を追い、俺は絶句した……。
コウちゃんの視線の先には…意識がなく、だらりと腕を垂らし槙島聖護に抱き抱えられている悠ちゃんが見えた。
奴は、こちらを見ている。
俺とコウちゃんに気づいたようで、不敵に笑った……。
その顔に、俺は怒りを覚えた……。
…この世界をめちゃくちゃに掻き回されたとしても、壊されたとしても、例え、俺の命が消えてなくなったとしても……。
悠ちゃんだけは…。
あの子だけは消えさせてはいけない。
失うことは、許されない。…許さない。
…悠ちゃんは、この世界に必要とされている…大切にされている……。
同時に、恐怖が込み上げてくる……。
もし、悠ちゃんが殺されたら…?
…もし、悠ちゃんが奴を選んだら?
……もし、悠ちゃん自身が…"死"を選んだとしたら……?