Welcome to our party 2 【気象系BL】
第94章 双愛 by millie
310号室。
そこはかつて和也がいた病室。
俺の全てが始まった場所。
あの部屋の窓辺に佇む和也を見て俺は医者になろうと決めた。
想いを貫いて主治医になってから何度も入った部屋。
そして…悲壮な覚悟を持ってこの部屋を二人で出た。
もう…二度と戻らないはずだったのに…俺だけがこの場所に戻ってきた。
そっと瞼を押える。
ここは和也がいる。
和也が俺に光と生きる意義をくれたから…。
俺はここに戻ってきた。
そして…約束通り、休みの度に様々なモノを見てまわった。
和也に伝えるために…。
病気のために狭い世界でしか生きられなかった和也にカラフルな世界を見せるために…。
けれど…今の俺はそれをやめてしまった。
和也と同じ病と闘う彼と出会ってしまったから…。
「眠れないの?」
消灯後の部屋は月明かりで仄かに明るい。
ベッドの背を起こして外を見つめる小さな背中に聞いてみる。
「翔先生?」
振り向いて俺の姿を確認すると小さな声で『寝たくないの』って呟いた。
「なんで?」
「だって…寝ちゃって二度と起きれなかったら嫌だもん」
思わず抱きしめたくなるのを必死で抑えた。
「大丈夫だよ、ちゃんと起きれるから。寝るまで傍にいようか?」
俺の一言に笑顔で頷いてくれた。