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第62章 散花の誓い by 咲子
高麗門にまで敵が攻め入ってきたという知らせが入ると、雅紀さまは私の手を取って大天守へと駆けた。
もう‥これまでか‥。
武具に身を固めた兵が慌ただしく櫓門へと走る。
最後の砦を守る為‥雅紀さまに最期の時をという家臣たちのせめてもの心遣いだった。
何度となく転びそうになるわたしを支えながら、階段を駆け上がっていく貴方の後姿をこの目に焼き付ける。
最上まであと少しという所で、狭間や格子窓から放たれる鉄砲の音が鳴り響いた。
「智‥急ごう。」
振り返った瞳は離別の決意を固めたものだった。
また‥お別れなのですね‥。
「はい‥。」
繋いだ手を握り直したその時だった。
階下で扉が破られる音がして、激しく刃を切り結ぶ音がした。
ようやく最上に辿り着いた貴方は、わたしを抱き寄せて
「今生でも添い遂げてやることができなかった‥。前世での誓いも果たしてやれぬ私を許してくれ。」
そう耳もとで囁いた。
もしかして‥貴方は覚えておられた‥?
「桜の舞い散る中で、雅紀さまに抱かれた夜のことは片時も忘れてはおりません‥わたしのために負うた火矢の傷も‥」
最期の時で無くば、秘めた想いを口にすることなど‥
「智も覚えていてくれたのか‥」
愛おしげに見つめてくれる瞳が、また来世でもと誓いを立ててくれる。
そして固く結ばれていた唇が柔らかく解け、わたしのそれに重ねられた。
その時‥今生での別れを惜しむわたし達を、背後に忍び寄る死の影が躊躇うことなく、ひと刺しに貫く。
同じ刃で貫かれ、共に血を流し‥崩れゆく中、わたしは愛する人に抱かれている歓びに胸が震えた。
「‥‥愛している‥智‥」
「‥来世でも‥ともに‥」
二度と離れまいと互いをいだきあいながら‥
わたしたちは今生に別れを告げた。