Welcome to our party 2 【気象系BL】
第62章 散花の誓い by 咲子
領内を一望できる大天守の高欄から身を乗り出すようにして、緑豊かな景色を嬉しそうに眺めている。
「ほら、みて下さい!もうすぐ桜が咲きそう!」
遠くの山を指差して、声を弾ませて振り返った笑顔は、あの頃と変わらない。
「ああ‥お前は本当に桜が好きなんだな‥。」
脇差が触れぬよう小柄な体を後ろからそっとに抱くと、智はその袖に自分の手を添えて静かに頷く。
「だって桜には雅紀さまとの思い出がたくさんあるんですもの。」
‥そうだな‥お前とはよく桜を愛でた。
あの時のお前は、花が散るのをみて命の儚さに涙を零していた。
「そうだな‥私も桜には抱えきれないほどの思い出がある。」
それを覚えているのは、私だけ。
二の丸の桜の花弁が乱れ舞うあの夜‥私はお前を失った。
城に火をかけられ‥燃え盛る炎の中で、火の粉に混じり舞い上がる花弁をみたお前は、『来世でも共に桜を愛でましょう』と微笑みながら、白い首に当てた刃を引いた。
私が先に命を絶ったお前の亡骸を抱き天守の階段を登ったのは、いつの時代だったのか。
敵の放つ火矢に為す術もなく、燃え落ちてゆく我が城とともに潰えた命。
またこうしてお前と巡り逢えるとは‥夢にも思っていなかった。