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第59章 眩惑 by つぎこ
天を仰ぎ見た。
頭上には重厚な煉瓦のアーチが砦のように聳え立つ。
ここはかつての華族の館。
長いアプローチを囲うように庭園が広がり、その中央に緋色の建物が悠然と在している。
計算された緋と緑のコントラスト。まるで絵画の中の古城のように、ここだけが時間を止めているようだ。
外界を隔てる境界。
然るが故の砦であったのかもしれない。
青銅色のドアノッカーに手を掛けた時だった。
「…翔ちゃんっ。」
こちらに向かってパタパタと駆け寄る音がして、玄関から雅紀が飛び出してきた。
「…遅いよ。」
顔を合わせ、開口一番がこれだ。
これでもできる限り仕事を調整して、できる限り急いで来たつもりだったんだけど。
在りし日の栄耀栄華を彷彿させる旧侯爵邸。
役作りの参考になればと、雅紀のために事務所が手配したものだ。
資料を読み漁るよりも、彼には体感型が一番だと…。
頬を膨らませる雅紀に、飾り窓のステンドグラスから、黄昏色が射しかかる。