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第16章 暁闇 by millie
夜明け前。
まだ闇に包まれているはずの時刻なのに城の外はものすごい数の松明が灯され、星さえ見えぬ程明るい…。
城内には人の気配はない。
いるのは窓辺に佇み外を見る城主のみ。
関係ない人間を逃がして欲しい。
心優しい城主が望んだ唯一の願いは相手方にあっさりと聞き入れられた。
戦況は既に決していたから…。
城主は寝台に近付くと身なりを整え、枕元の忍ばせた短刀を手に取った。
「囚われて辱めを受けるくらいなら…」
誰もいない空間に響く声。
小さく覚悟を決めると短刀を鞘から抜く。
キラリと光る刃は美しいものに思えた。
首筋に刃を触れされる。
力を込めようとした瞬間…手を掴まれ短刀を取り上げられた。
びっくりして邪魔した者の方に視線をやる。
「何故?」
城主の視線の先には逃したはずの幼馴染の姿があった。
「公こそ…。なにしようと?」
整った顔立ちに怒りの感情が混じった笑みを浮かべて城主を見る。
「松本?早く逃げろ…日が昇ればここは彼奴らの物になる…その時にこんな所にいたら…」
普段と同じように潤のことを呼ぶ雅紀。
「そんなのどうでもいい!雅紀!俺が聞いてるのは『なに』しようとしてたか、だ!」
「全ては決したんだ…。責任を…取らなくちゃいけないんだ。民を幸せに出来なかった俺が出来る最後の役目だから…」
普段から穏やかな城主は諦めと決意を秘めた目をしていた。
決して伝えることは赦されない秘めた想いを胸に、瞳に焼き付けるように幼馴染の整った顔を見つめた。