第8章 加速
side.chisaki
諒が、ジャックだった。
理解の範疇を超えている。
「何するつもり?人質にしてCCGと交渉するの?それだったら私今ここで死ぬ」
震える声で威嚇した。
彼はマスクを取った。
そこには、整った顔立ちの諒がいた。
「なによ」
諒「そんな怯えなくていい。結婚してくれればいい」
「は?」
さっきから夢の中にいるみたいに話がわからない。
逆に、夢だったらいいんだけど。
「私と諒が?」
諒「何年待ったと思ってる?一回待ちきれずに、君のお母さんのところに行ったけど、それを彼女は拒否した」
「それでお母さんを殺したのか。」
驚くほど自分は冷淡だった。
「死ねよ。誰がお前と結婚なんかするか。それなら私はここで舌を噛んで死ぬ。」
諒「させるわけないだろ!」
彼は私が舌を噛まないようにハンカチを噛ませた。
気がつけば、泣いていた。
郡先輩…助けてよ…ねえ…お願い…
そのとき、私のお腹がなった。
こういうのはいつも通りなのか、と自己嫌悪した。
しかし、事態は好転した。
諒「ご飯買ってきてあげる」
おそらく、ここがいいタイミングだ。
諒が出ていったあと、私はハンカチを噛み切り、腕や足についてる枷を眺めた。
どうやったら解ける?鍵?
鍵は彼が持っているはずだ。
警戒はしてるだろうから、ポケットにでも入れてるだろう。さっきポケットから音も聞こえた。
いいことを考えついた。
何をしてでも、生きて戻ってやる。