第5章 4
「……ところでさ、エース」
「ん?」
「帽子、どうするの?なんか見失ったっぽいけど」
「あっ……」
しまった、というような表情になるエース。
まさかとは思うけど……。
「……もしかして忘れてた?」
「いやいやいやいや、忘れてねェし!!ただカモメがものすごい速さでいなくなっただけだし!! 」
「……はぁ。」
こいつ、完全に忘れてたな……。どこまで能天気なんだよ……。
本当にどうしようもない馬鹿だ、と思っていたら、僕は更にあることに気が付いてしまった。
「ねえ、食糧とかって……」
「ん?忘れてた!!」
……全く予想通りの答えが返ってきた。
つまり、つまりだ。
僕たちは食料も水もなしで大海原を航海中……ってこと?
「……これ完全にアカンやつや……」
やばいやばい、流石にこれはやばすぎる。
追い打ちをかけるかのように僕たちは今一銭も持っていない。
絶望した!!!!
「大丈夫だって!! いざとなったら魚とか獲ればいいだろ!!な? 」
へらへらと笑いながらのんきにそう言うエースにグーパンしてやりたい衝動に駆られたが、ぐっとこらえて僕は静かにうなだれた。
今ならマルコ隊長の苦労もわかる気がする……。