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白いカーネーション

第1章 ◎出会い


気分が落ち着いて
体を大雑把に拭き
服を着替えて出ると
慧さんは隣の扉にもたれ掛っていた。



「あの、さっきはすいません。」



さっきであったばかりの人に
こんな話をされたって
きっと迷惑に違いない。



「ありがとう。」


意外な答えが返ってきて
おもわず俯いた顔を
慧さんの方に向けた。


「自分の本当の気持ち
 会ったばっかの俺なんかに
 ちゃんとぶつけてくれて。」



私のそばに駆け寄り
握りしめて爪痕がついてしまった
私の両手を優しく包み込んだ。


「じゃあさ、探しに行く?
 その居場所ってやつ。」


「探すって?」



「俺ね、こう見えても旅人なの。」


そう言って
クシャッと笑うと
手を離して、そのまま
私の頬に触れた。



「だから、俺と一緒に来て
 ここならって思うところまで
 責任もって連れてくよ。」



あふれ出てくる涙を
親指で拭い
目線を合わせるようにかがむ。



「その場所が見つかるまで
 俺を仮の居場所にすればいい。

 俺が生きててほしいから
 君は生きる。

 これ、十分意味になってると思うよ。」



肩に手をのせ
目線を逸らせないよう
力強く見つめてくる。



「でも、バイクなんじゃ…。」



「二人乗りだから大丈夫。
 お金だってある程度あるし
 野宿なんてさせないよ?」



その笑顔
信じていいのかな?



私は彼の悪戯のような笑みに
賭けてみることにした。
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