第2章 プロローグ
兄さんと千さんと、2人が楽しそうに歌うRe:valeが大好きだった。
だから、あの時――突然現れて、兄さんに怪我をさせて、2人を引き裂いた九条が許せなくて。
何も出来ない自分が、悔しくて。
夢を諦めてしまった兄さんの姿が悲しくて。
いろんな思いでグチャグチャになって、千さんの気持ちを考えられなかった。
私が兄さんを支えないと。
九条から守らないと。
そんな使命感に取り憑かれて……気づいたら、兄さんと2人千さんの前から姿を消していた。
あんなに大好きだったのに。
これからもっと、沢山の人に歌を聞いてもらうはずだったのに。
私は気持ちの整理も、兄さんを説得することも。
千さんの傍にいる事も出来ずに、ただ逃げ出した。
そうして意気消沈していた私の元に、怪我が治り始めた兄さんは、小鳥遊社長を連れてきた。
最初はまた九条みたいに、兄さんを利用しようとしてるんじゃって、警戒した。
だけど、何度か話す内に 温かい人柄が分かって、この人は悪い人じゃないって思うことが出来た。
それになにより、兄さんが久しぶりに笑顔を見せてくれた事が嬉しくて、私は兄さんと2人、小鳥遊さんにお世話になることに決めて。