第6章 戯
「…なぁ」
暗がりで口を開いて。
「オイ、寝てんのか?」
声を掛けてみる。
規則正しい寝息に。
妙な安心感と。
中途半端な苛立ち。
男の性と。
俺の理性。
頼む…ブッ飛ぶ前に起きてくれ。
だって、おかしいだろ。
どう見たって、この構図。
だって、俺。
女に腕枕されてるんだけど。
後ろから腕回されてるから。
背中に何か、当たってるんだけど。
普通、逆じゃね?
男が腕枕して。
ぎゅっと抱き締める、みたいな。
何かが違うと思うのは。
俺だけか?
俺は後ろから攻めるのが好きだから。
こんなことになるなんて。
想像してなかったからね。
一緒の布団で眠るなんて。
あんなお願いされるなんて。
想像の域を超えてるだろ?
受け入れたのは俺だけど。
とんでもない罪悪感植えつけといて。
すやすや寝やがって。
こっちは寝たくても。
背中が気になって眠れねェ。
銀さんだって、男の子なのに。
そんだけ無防備だと、傷つくわ。
イヤ、前から抱きつかれても困るんだけど。
色々、回避できなくなっちゃうからね。
「ずっと、こうしたかった」
観念したような台詞に。
微かに胸が疼いた。
初夜って、こんな感じ?
お互い気恥ずかしくて。
顔もまともに見れない、みたいな。
現状は……顔が見えない、みたいな。