第5章 1864年 ー文久四年・元治元年ー 【前期】
「後の処理は頼んだ」
「はい」
昼間の巡察中。
浪士達と斬り合い、浪士数名は確保、一人はその場に倒れた。
事後処理は監察方に任せる。
現場に来た山崎と一緒に、先日監察方入りしたという、夢主(姉)が来た。
現場は血が散乱し、生々しい死の匂いがたちこめている。
「しっかし…夢主(姉)ちゃんって…可愛いげがないよね。こんな現場を見たら、普通の子なら悲鳴をあげて立ちすくんでもおかしくないのに。」
その言葉に、夢主(姉)本人ではなく、山崎が反応して総司を睨むが、当の総司はと悪びれた様子はない。
確かに…この女は、初めて会ったあの日も、妙に落ち着きはらっていたな。
総司が言っていることも一利ある。
女というものはこういう物に、弱いのではないのか。
山崎でさえ、監察方になった当初は、現場にきては吐いていたことを思い出す。
夢主(姉)は複雑な顔をしながらも、口元だけで作った苦い笑みを総司に向けた。
それから、倒れている浪士に手を合わせ、数秒拝む仕草をしてから、山崎の指示に従って処理に入る。
しばしその妙に落ち着いた夢主(姉)の様子に見入ってしまったのだが、いつものように彼らにその場を任せて、俺達は屯所へ戻った。
屯所へ戻れば、平助と夢主(妹)が庭で稽古をしているのが見えた。