第5章 1864年 ー文久四年・元治元年ー 【前期】
伝わるかな。
仕事の危険さはわかってること。
でも、それ以上に・・・
どんな覚悟でお姉ちゃんが承諾したのかがわかっちゃうこと。
そして、ここ重要だよ。
…土方さんのその気持ちが嬉しかったってこと。
伝われ。伝われ。
だって、言葉にすると陳腐に聞こえる。
ふっと、土方さんが小さな息を吐いた。
「…そうだな。お前はわかってる」
そう言うと、今まで見たことないくらい優しく笑った。
「…ありがとな」
部屋を出て行く私の背中に、消え入りそうなほど小さな声で。
そうだよ。
もっとお礼言ってよね。
でも今振り向いたらきっと泣いちゃう。
お姉ちゃんに危険がついてまわるなら、私が少しでも取り除こう。
お姉ちゃんが辛くても笑ってなければいけないなら、一緒に笑おう。
ついでに、土方さんが前を向きやすいように。
本当にちょこっとだけど。
私にも背負わせてね。
あくまでもお姉ちゃんのついでだからね。
「明日からまたがんばります!」
そんな捨て台詞で、私は部屋を後にした。