第5章 1864年 ー文久四年・元治元年ー 【前期】

「夢主(姉）に監察方で働いてもらう事になった。」

土方さんにそう告げられたのは、お姉ちゃんが山崎君とどっかに行った日の夜だった。

土方さんは何の感情もない表情で、でも私の目をしっかりと見てる。

「この事は他言無用だ。」

言い方は凄く冷たい。


けど、わかってるんだ。

わざとだって事くらい。

だって、私にだって知らせない選択肢もあったはずだよ。


「それはまた…適材適所ですね！」


わかったよ。

私に冷たく教えてくれた、あなたの気持ちが。

伝わってるよ。



そんな危険な事をさせるなんて。

女で監察方をやるってことは、命以外の危険もある。

もちろん、死とも今までより遥かに距離が近くなる。


どうして姉にそんなことさせるんだ！って、責められる覚悟なんでしょ？


そして、責めた後でこういうんだ。


「恨むなら俺を恨め」


そうやって全部背負っちゃおうって思ってるんだ。

魂胆はわかってるよ。

そうは問屋がオロサナイってもんですよ。

だって、冷たい表情とは裏腹に、あなたの目は今もそんなに辛そうなのに。


だから、私はあえて能天気にそう言ったんだ。


そしたら土方さんは、怪訝な顔をした。


「…お前、監察方の仕事がどんなもんかわかってんのか？」

私は、全ての想いを込めた。

「私たちは姉妹です。だから、わかってます。」

土方さんの目をまっすぐに見据える。