第5章 1864年 ー文久四年・元治元年ー 【前期】
…何この人。。。
初めて外出をゆるされて、一緒に外出するのは山崎さんという切れ長の鋭い瞳で体の線が細い人。
さっきから私への不信感と殺気がコラボされてる。
ここに来てから約二か月…せっかく外に出れたのに…話かけてもとくに会話にもならない。
つまんないなぁもう…
そんなことを考えていたら、
「新選組を――――」
何か聞こえた。良い話じゃないみたい。
山崎さんを見れば、どうやら聞こえなかったみたい。
「山崎さん、聞こえました?」
「…何をだ」
「ちょっとここにいてください。悪口、聞こえちゃったんですよね…。」
山崎さんの返事は待たずに、さっきの声を追いかける。
そこにはいかにも悪そうな顔をした男達が3人くらいいて、何やら物騒な話をしている。
なんだか少し頭が悪そう。
子供のふりをして近づけば、案の定、何の警戒もされなかった。
そのまま、話を聞いていたら、どうやらこれは新選組にとってよくないことだと理解できた。
怪しまれないように「兄ちゃん達頑張ってね」なんていいながら男達に手を振って、その場を離れれば、不信感に不信感を重ねた表情をした山崎さんがこちらを向いて立っている。
そんな山崎さんの様子を無視して、わざと明るく話かければ、不信感に動揺が混ざった空気になった。
何かお化けでも見ちゃったような顔をして、少しだけ震えた声で、
「………どうやって聞き出した?」
と、聞かれれば、私はありのままを話す。
それからは、不信感に興味が混ざったような不思議な空気に包まれながら帰り道を急いで、すぐに山崎さんは土方さんのところへ行ってしまった。
あ~あ。もっと怪しまれちゃったかもなぁ…と我ながら自嘲の笑いがこみあげる。