第5章 1864年 ー文久四年・元治元年ー 【前期】
「………で?山崎お前から見て、その情報は確かだと思うか?」
今日紹介された夢主(姉)君を連れて、副長の使いへ出たときのことだ。
副長からは、「目を離すな、行動を監視しろ」との命令があった。
正直、夢主(姉)君は男装があまり様になっていなくて、不信感しかない。
突然、俺ですら聞こえなかった浪士の言葉を追いかけて、夢主(姉)君が単身で浪士達に乗り込んで行ってしまった。
俺は監察方という仕事柄、耳はよく聞こえている方だと思う。
そんな俺でも聞こえなかった。
乗り込んだと思えば、素知らぬ顔をして、浪士達に手をふっている。
怪しい…怪しすぎる。
何故夢主(姉)君を新選組に置いているのか、ましてや何故今俺といるのか…それすらわからなくなる。
「あっ山崎さ~ん!すみませんお待たせしました!大変なこと聞いちゃったかもしれません。」
こちらの心とは裏腹に、脳天気な表情と声色で、俺に話かけてくる夢主(姉)君。
聞けば、浪士達の企みを聞いてきたのだと言うではないか。
しかもそれは、俺が最近調査を始めた案件と合致する。
「…………どうやって聞き出したんだ?」
単身乗り込んだことを怒るのも、浪士達に手を振っていた理由を問うのも忘れて、俺は聞く。
「ん~…子供のふりしておだててみたの。お兄さんかっこいい!僕もまぜて!って。」
ひょうしぬけするような明るさでそんなことを言われれば、俺は何も言えなくなってしまった。