第5章 1864年 ー文久四年・元治元年ー 【前期】
そういうわけで、翌日から私は土方歳三の小姓として働くことになった。
とにかく、ぼーっとする暇が全くない。
土方さんは暇さえあれば、次から次へと新しい仕事を持ってきて、何かしら忙しくしている人だった。
「夢主(妹)、あれ持ってこい」
初めこそ、あれってなんだ!っとつっこみそうになってたけど、事務作業は得意な方だ。
すぐに慣れて、意外とテキパキこなせるようになった。
スケジュール帳ってなんて偉大なの!?って思い知ったけど…
「夢主(妹)スゲーな!土方さんがあんなに小言言わない奴なんて初めて見たよ!」
「えっ!めっちゃ怒られてるけど!」
「いやいや、あんなもんじゃないんだって!雷が落ちるって例えそのまんまなんだって!夢主(妹)に言ってるときはせいぜい、暴風くらいだろ?」
「いやぁ、十分怖いよ!」
「まぁ、とにかく、みんなも褒めてたぜ!要領がいいってさ。」
「・・・ありがと。」
背丈があんまり変わらない平助は、いつも私の剣術稽古につきあってくれていた。
…ここに来た時に感じた、新選組に対する恐怖感はもう無い。
とにかく生き残る為に必死にならないといけないなって感じだ。
何より、歴史に名を残す名剣士達の中で、大好きな剣術の稽古ができるのが嬉しい。
帰ったら自慢しよーとか、いろいろ思ってたけど、どうやら帰れるかどうかは分からない。
ここまできたら、順応したもん勝ちじゃい!