第3章 まさかの手合わせ
一方、夢主(姉)は夢主(妹)の割れた竹刀を拾い、沖田へ飛びかかれる位置までいつの間にか移動していた。
それを抑えるがごとく、斎藤の腕が夢主(姉)の腰にまわり、抱きつくような姿勢で押さえている。
土方がそれに気づき、眉をひそめる。
あいつ…いつの間に?俺が気がつかなかっただけか?
いや・・・気付いたのは斎藤だけか・・・
土方の視線に気付き、夢主(姉)がはっと笑顔に戻り、斎藤を振り返ると、にこりと笑って言った。
「斎藤さん、大丈夫です。」
斎藤は自分の腕が抑えている場所を思い出し、 顔を赤らめながら慌てて離す。
「すまない。」
斎藤の視線は既に夢主(姉)から逸らされていた。
一方、夢主(妹)の大奮闘に、皆は興奮状態になっている。
「おまえ…!やるじゃねえか!」
永倉は未だ腰が抜けたようにへたりこんでいる夢主(妹)の背中をばしばしと叩く。
「総司相手にここまでやるとはなー。すげーじゃん!」
藤堂もただただ感心している。
「副長・・・」
山南が土方に近づく。
「これは…処遇を考えないといけませんね?」
「・・・」
土方は夢主(妹)をじっと見ながら、何かを考えている。
その夢主(妹)は、ふらふらと立ち上がって沖田に礼をした後は、 何を考えてるのか険しい顔をしてぼーっとしている。
そこへ千鶴が気遣わしげに近寄り、何やら話しをしていた。
「斎藤!とりあえず、一旦部屋に戻せ。」
斎藤はうなずくと三人を誘導し始める。
「あとは全員今日の隊務につけ。三人の処遇の話しは夕飯の後だ。今日はもう時間を使いすぎた。」
土方の命に全員すばやく動きはじめた。
「トシ…」
近藤は困った顔で土方に近づいてきた。
その視線を土方も困ったように受け入れる。
-----近藤さんの答えは…ひとつだろうな・・・
土方は、ため息をひとつつくと、自らも境内を後にした。