第11章 【元治二年 二月】組織の秘密と優しい嘘
副長の部屋を出て、直ぐに沖田さんの部屋を目指す。
夢主(姉)君の事をまかせてしまったが…よかったものか…。
正直言えば沖田さんの思考回路は理解不能で…組長としての信頼はしているが気は合わない。
が…あの場で夢主(姉)君の異変に、俺と同時か…いや…はじめに気が付いたのは沖田さんだった。
夢主(姉)君に好意を持っているのか?
それは気がつかなかった。
むしろ、二人に接点はあまり無いはずだ。
組織監察をしている身としては、それに気づけなかった事は盲点だったと反省する。
それにしても…夢主(姉)君は大丈夫なんだろうか。
俺には人の恋というものを悟れるほど経験があるわけでもないし、ましてや女心なんて難題中の難題だ。
夢主(姉)君の言動はいつも想定外だが、驚きはしても怒りや呆れはない。
それに慣れたのは仕事を共にこなして来たからだろう。
そんな事を考えながら沖田さんの部屋の前にたどり着いた。
が…しかし…
入るわけにはいかない空気感に足を止める。
俺は夢主(姉)君に対して、色恋というような感情は持っていない…と思っている。
彼女が監察方に決まってから、それなりに月日を共に過ごした。
俺なりに…夢主(姉)君という人物は、そういう方面ではかなり奔放な女子なのだろうという見解をしているのだが…。
今の彼女の悲しみは本物で…彼女には…夢主(姉)君が今必要なものがわかるような気もするが…俺には夢主(姉)君が必要なそういうものは与えられないから、これはこれでいいのだ…と、到底俺には理解しがたい色恋事情を頭の中を整理して、沖田さんの部屋から少し離れた。
そうとなれば、気掛かりな事がひとつある。
その為にはしばらくこの場に留まる必要があった。