第11章 【元治二年 二月】組織の秘密と優しい嘘
土方さんが山南さんの「死」を告げた後、夢主(姉)ちゃんは俯いたまま動かなかった。
なんでこんな時まで我慢してるの?
泣き喚いたって誰も怒んないよ。
…まあ伊東さんにばれたら面倒臭いから、静かにしろって言われるかもしれないけど、そんなの皆で何とでもごまかせる。
ぴくりと肩が少し上がったのを見て、居ても立っても居られなくなった。
もう…しょうがないなぁ…
夢主(姉)ちゃんの顔が皆に見られないように、肩に担ぐと同時に、山崎君が助け舟を出してくれた。
さすが監察方…伊達に夢主(姉)ちゃんと仕事してないよね…よく見てるよ。
伊東さんが来るからって事にして、その場から夢主(姉)ちゃんを連れ出した。
あーんな皆が注目してる中じゃ、夢主(姉)ちゃんは素直に悲しめない。
仕方がないから部屋を貸してあげるよ。
呼吸がおかしくなってる夢主(姉)ちゃんの背中をさすりながら、自室に急いだ。
もう夜も更けてるけど…誰かに遭遇しなくてよかった。
自室に着いて、担いでる夢主(姉)ちゃんをそーっと布団に降ろす。
苦しそうにうずくまる夢主(姉)ちゃんの腕をそっと引いて、背を僕の胸に寄りかからせた。
僕の「風邪」は…移したら多分大変なんだけど…。
移る?なんて一か八か夢主(妹)ちゃんに聞いてよかった。
瞬時に固まった夢主(妹)ちゃんの様子で、僕が多分ただの風邪じゃない事に確信が持てちゃったし。
移る可能性は低いみたいだから…
「ごめんね。これが一番の方法だから…」
一応、声をかけてから、夢主(姉)ちゃんの顎を持ち上げて上を向かせて鼻をつまむ。
苦しげに開いてる夢主(姉)ちゃんの唇に、すぅっと息を吸い込んでから、僕の唇を合わせた。
ふぅーっと夢主(姉)ちゃんの口の中に、僕の中の息をゆっくり吐き出していく。
僕の鎖骨に夢主(姉)ちゃんの頭がこつんとついたから、そのまま寄りかからせた。
息を吐ききれば、もう一度吸い込んでから同じように唇を合わせる。
苦しそうな夢主(姉)ちゃんの手が、僕の腕の辺りの着物をぎゅうっとつかんだ。