第10章 1865年 元治二年
深く重ねた唇を離せば夢主(妹)の息苦しそうな吐息が甘く聞こえる。
「これが…俺達の最大の機密事項だ。お前はもう知っちまった…。もう逃がしてやるわけには行かなくなった。」
夢主(妹)の顎を持ち上げて、瞳を合わせる。
「私は土方さんと辛い時も悲しい時も離れないって決めてます。 」
その瞳は澄んでいて…俺なんかが汚しちまうのが怖いくらいだった。
「正直…そんな薬怖いですけど…土方さん!」
俺を呼ぶ声が少しでかくなったと思えば…夢主(妹)の両手が俺の頬を包む。
「そ、そうやって、沢山の罪悪感とか…そういうの…全部、ぜーんぶ…私と半分こしましょう!!」
そう言い終えると、俺の唇に夢主(妹)の唇が軽く触れた。
夢主(妹)を見れば、耳まで真っ赤だが…その瞳は強くて深くて…やっぱり澄んでやがる。
「持ちきれるように、私も頑張りますから!もうそうやって…」
涙をぼろぼろ流しながら、明るく振る舞う夢主(妹)に今度は俺から口付けた。
舌をすべり込ませれば、夢主(妹)の体は強張ったが…悪いが少し止められねえ。
畳に組しだけば、いよいよ夢主(妹)は目を固く閉じて固まった。
それを少し眺めてから、固く閉じたままの瞳に口付ける。
「…ちょっと出てくる」
寝転げたままの夢主(妹)にそう言って、外に出た。
青かったはずの空には雲が出て、灰色の世界が広がっていた。