第10章 1865年 元治二年
お姉ちゃんが居なくなった屯所生活は、ものすごく寂しいものに…なるかな?と思ったのだけど、元々この世界に来てから、あんまり顔を合わせて無かったのもあって…びっくりするくらい変わらない日々を過ごしてる。
変わったのは、隊士さんが増えて…これまで以上に性別がばれないようにしなきゃって事。
昔から馴染みがあったっぽい、今までの幹部達の他に、伊東さんっていう…なんだかややこしそうな幹部が増えた。
その人に対して、土方さんはなんだかいつもイライラしているみたいで…眉間に皺が寄りすぎてる。
後は…
ちらりと背中あわせに座ってる土方さんの背中を覗き見する。
あの日…たしかに…私は土方さんと、キ、キスをした気がするんだけど…
あれ以来、キスなんてしてない。
気のせいだったのかな?
でも…毎日じゃないけど…仕事終わりに、「ゆっくり休め」って頭を撫でてくれたりして…その時の土方さんは、とっても優しい。
土方さんの着物の匂いが好き。
書き物をしてる時の真剣な顔が好き。
書類に読むときの、伏せた目が好き。
おい、って呼ばれるのも好き。
小さく溜息をついた後の顔が好き。
それから…
眉間の皺も好き。
どうしよう…どきどきする。
「夢主(妹)」
土方さんはドキドキとかしないのかな?
「夢主(妹)」
ってかこんな時に私にドキドキしてる場合じゃないよね?
「おい夢主(妹)」
はっ!!なんか呼ばれてる!
「寝てんのか?」
気がつけば土方さんは私の目の前に居て、私の顔を覗き込んでる。
「ひゃあっ」
その顔は近くて、思わず蛙みたいに後ろに飛んでしまった。
「なんだ起きてんじゃねーか。」
そう言う土方さんはなんだか少し呆れたように小さく笑ってる。
「す、すみませんっ」
なんだか顔が熱い。
こんな忙しい時にあんな事考えてたなんてバレたら恥ずかしすぎる!
「何を考え込んでやがる」
私の机の前にしゃがみこんでた土方さんは、飛び跳ねた私の近くまで移動して、再びしゃがみこむ。