第9章 1864年【後期】 門出の時
そっと袂が広げられて、肩まで肌が露わになれば、冷たい空気が妙に心地いい。
私を見つめる山南さんの頬に右手を添えて体を少し起こし、今度は私から唇を合わせた。
合わせた唇から舌が口内に入り…だんだんと激しいものに変わっていく。
私に触れる山南さんの指や舌や唇は、今まで私が経験した、同年代の自分本意な触れ方ではなくて… 今まで山南さんに触れられた全ての女の人に嫉妬をしたくなった。
山南さんの指が…手のひらが…唇が…舌が…私に触れる度に、息があがり声が漏れる。
「貴女を思いきり鳴かせてみたいところですが、屯所中に聞かせてしまうわけにいきません。少し苦しいかもしれませんが、それもまた一興…」
そう言って山南さんの手のひらは、私の口を塞いだ。
息苦しさが更に感覚を研ぎ澄ませるかのようで、何度も登りつめていく。
そんな強引さと、時折くれる優しすぎる口づけは、私を完全に征服するようだった。
「山南さん…」
ぎゅっと閉じていた目を開けて、私に触れる山南さんを見る。
何も着ていない山南さんは、見かけよりも凄く逞しくて…それだけで胸の奥がどきりと高鳴った。
左肩の傷は深くて…触れていいものかと躊躇ってしまう。
傷口にそーっと唇をつけて、どうか治りますように…と心内に願いを込めた。
山南さんの事が好きなのかもしれない…わからないけど、さっきから胸の奥が苦しい。
私を見つめる瞳は凄く優しくて…そんな山南さんに胸がぎゅうっと締め付けられる。
そして…再び口元に山南さんの手のひらがあてがわれると、私の中で山南さんが動き出した。
この行為を今まで気持ちがいいなんて思った事が無かったのだけど…
塞がれた手のひらから声が漏れてしまいそうになるほどの感覚が私を襲い、もう何度目だかわからない絶頂の波が訪れる。
霞んだ視界に、私が与えている刺激に眉を寄せて息をあげる山南さんが見えて…それが物凄く嬉しくて…愛しくてたまらなかった。