第9章 1864年【後期】 門出の時
明日、此処を出る夢主(姉)ちゃんを元気付ける為に、昼間に原田さんと永倉さんと平助君がびっくりするくらいの甘味を持って、部屋に来てくださった。
「ほら、千鶴ちゃんも遠慮してねえで食え食え。」
「平助が煎れた茶だからな・・・うまいかどうかはわかんねえが、たまにはいいだろ?」
お団子の包みを開けながら、永倉さんは私にもそう言ってくれて、原田さんが湯呑みを渡してくれた。
「おいしそうなものがいっぱい!あ!平助!それ私が食べるやつ!」
「ああ?こんだけあるんだからいいだろ!お前そっち食えよ!」
夢主(妹)ちゃんと平助君はずっとこんなかんじで、
「もう平助にはこれあげない!左之さんこれおいしいよ?」
と、夢主(妹)ちゃんが原田さんに言えば、普段は甘い物を召し上がらない原田さんも、
「甘いな」
なんて笑いながら、夢主(妹)ちゃんの食べかけのお団子を食べてしまったり・・・。
「永倉さん、口元に餡子ついてますよ?」
と笑いながら永倉さんの口元に指を伸ばす夢主(姉)ちゃんに、
「あー!しんぱっつぁんが照れてるーー!」
なんて、からかい始める夢主(妹)ちゃんと平助君。
きっと、しんみりしてしまわないように・・・夢主(姉)ちゃんの為でもあって、夢主(妹)ちゃんの為でもあるんだろうなって・・・皆さんも心遣いが伝わって来る。
「千鶴!これ平助から守っておいて!」
なんて言って、お茶のおかわりを煎れに行こうとしてる夢主(妹)ちゃんに、
「私が煎れるよ!」
と、代わって部屋の外に出た。
勝手場に着くと、お昼の巡察を終えた一番組の皆さんが帰って来たところだった。
その中に沖田さんを見つけて、
「沖田さん巡察お疲れ様です。」
と、声をかける。
「ありがとう千鶴ちゃん。お茶、僕にもくれる?」
沖田さんはそう言うと、勝手場の中に一緒に来てくれた。
お湯を沸かしている間、特に何かお話するわけでもなかったけど・・・沖田さんが一緒に居る事に、なんだかどきどきしてしまう。
でも・・・
沖田さん・・・貴方の視線の先にいるのは・・・