第8章 1864年【後期】決意の時
「夢主(姉)君、もう時期・・・隊士が増える。そうすれば俺はしばらく内部監察の仕事を主にしなければならない。」
諜報活動中は、屯所へ戻るとまずは山崎さんのお部屋へ直行する。
たいてい夕飯の時間を過ぎてしまってから戻る私に、山崎さんはいつもおにぎりを用意してくれていて、報告を終えてからそれを食べる。
おにぎりは千鶴ちゃんが山崎さんへ渡してくれてる。
今日もいつものごとく、山崎さんのお部屋でおにぎりを食べていた。
「そっか・・・江戸から新しい隊士さんが来るのかぁ。」
近藤さん達が、江戸に新しく隊士を集めに行ってもうふた月近く経つ。
「ああ。君もますます行動するのが大変になるだろうな。」
苦笑しながらそう言う山崎さんを、じろりと睨む。
「まぁ・・・初めて君を見た時よりは、その男装も様になっているように思えるが。」
膝をかかえる格好・・・いわば体育座りをしておにぎりを食べる私をじっと見て、山崎さんはこう続ける。
「君が女子であることを見抜く者は多いだろうな。まぁ・・・そんな座り方をする女子は珍しいが・・・」
正座なんてする気力ないもの、とぽつりとこぼして、最後の一口を食べきった。
「ごちそうさまでした。」
手を合わせてそう言えば、山崎さんは淡く微笑んだ。
山崎さんて・・・実はキレイな顔してるよね。
でもなんだろう・・・几帳面すぎるのかな?
彼女に尽くしそうなタイプだけど・・・口うるさそうだなぁ。
そんなどうでもいいことを考えている私に、
「これは副長から聞いたのだが…。夢主(姉)君には話す許可を得たから言うが・・・」
と、真面目な話をはじめる。