第7章 1864年ー元治元年ー【後期】
戻ってきた夢主(妹)は、襖を開けて俺を見るなり耳まで真っ赤になった。
それをからかって、書類と再び向き合うと、背中にしばらく視線が注がれた。
それを気づかないふりをして仕事を続ける。
しかし…いつになったらこいつは気がつくんだ?
まだ、いいか…そのままで…
女に幸せを与えられるような立場じゃねぇし、そんな暇もねえが…
惚れた女が自分も新選組の一員だっつってんだ。
ありがたく受け止めちまうぜ?
男として…武士として…女を巻き込むのはどうだとか…もうそんなの関係ねぇだろ。
こいつに限っては。
我ながらてめえに都合のいい解釈だな、と笑えてくる。
いいかげん腹くくるのは俺の方だ。
「今日はもうあがれ。」
背後でせっせと書類を片付ける小さな気配にそう声をかけると、
「あ、じゃあこれだけ終わったらにします!」
と、筆は止めずに返って来る。
「明日、刀の手入れでもして来い。斎藤に頼んでおく。」
その言葉に、筆をぴたりと止めて、夢主(妹)は振り返った。
俺の背に視線を送ったまま動かない夢主(妹)の方を、少し振り向いて見てやれば、
「ありがとうございます!」
なんて、きらきら目を輝かせて満面の笑みを見せやがる。
そんな顔されたら…刀持つな、なんて言えねえだろうが。
仕事を終えて部屋へ戻って行く夢主(妹)のパタパタパタという足音を聞きながら、冷めた茶を喉に流しこんだ。