• テキストサイズ

【薄桜鬼 トリップ】さくら玉

第7章 1864年ー元治元年ー【後期】


ふと、ぽんと頭の上に手が置かれた。

「女物の着物もそうだが…言葉も違和感無かったぜ?ああやって普通の町娘の姿を見てると、お前も普通の年頃の女なんだなぁって実感する。あんまり無理するなよ?そしてあんまり考えこむんじゃねえよ?」

そう言う原田さんはとても優しい目をしていて、

「ありがとうございます」

そう言うのが精一杯なほどなんだか見惚れてしまった。

「しっかし…あいつに女の口説き方を教えてやらないとな」

そう笑いながら話す原田さんに、

「あれはあれでかわいくっていいと思います…相手が私じゃなければ」

「ははは。言うじゃねぇか。ま、お前さんを落とすには随分と骨が折れそうだ。」

顎をさすりながらニヤリとした原田さんの顔はなんだか色っぽい。

「…原田さんもね?もてる男を落とすのは大変そうです」

しばらく笑い合っていたら、なんだか気が晴れた。


「たまにはそうやって笑えよ?馬鹿な話にはつきあってやるからよ。ま、お前は可愛い妹みてえなもんだ。兄貴に気を使う必要なんてねえからな?」

あははは、と笑う私に、原田さんは頭をくしゃくしゃと撫でて言う。


「笑えよ」なんて、いつも笑顔でいるはずの私に言う人なんていないのに。

原田さんの言葉がうれしくて、私はこれからも頑張ろう、と素直に思えた。


折れそうになったら助けてくれる人がいる。

頼もしいお兄ちゃんが出来たなぁ。

私の進む道…まだわからないけど、ここの人達が好きだから、やれることをするんだ。

それでいい。




部屋に戻って空を見上げれば朧月。

明日も雨降るかも…

私はぼんやりと光る朧月をしばらく見つめた。
/ 294ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp