第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
蛤御門へ着くと、戦いはすでに終わっていた。
「土方さーん」
いつのまにか現れ、背後からやはりかなりの場違いな声色で土方を呼ぶ夢主(姉)に、
「うわっお姉ちゃん!」
と、夢主(妹)は驚きつつも少し安心し、能天気にも見える夢主(姉)に、土方の眉間に皺が寄る。
「えっと・・・ここは会津の人と薩摩の人が追い払ったみたいです。公家さんのとこにはまだ長州の人が残っています。」
「ああ、そっちには原田を向かわせた。」
「あと、この襲撃の中心人物さん達は、天王山へ向かってるらしいです。山崎さんが追いかけてます。」
それを聞いて、土方は少し黙って何か思案をはじめる。
そして、
「忙しくなるぞ。」
と、嬉しそうに言った。
その言葉に隊士達の表情は明るくなる。
「斎藤はこのまま蛤御門の守備にあたれ。夢主(姉)、お前もここにいろ。」
「御意」
「は~い」
斎藤と夢主(姉)に指示を飛ばし、近藤への仕事も出し終え、
「残りの者はは天王山へ向かう。」
と、よく通る声で隊士に言い放った。
そして、くるりと首だけ振り返った土方は、
「夢主(妹)、気合入れ直せ。こっからが本番だ」
と、すぐ後ろを歩いている夢主(妹)に声をかける。
「はいっ!」
気合の入った返事をする夢主(妹)に、土方は近づき、
「無理はするな。何かあれば俺を頼れ。いいな?」
と、囁くようにそう言うと、再び前に出て、力強く歩き出した。