第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
広間では、幹部達が集まって会議を行っている。
土方の横には、書類を渡したり書き物をしたりと、忙しく動く夢主(妹)の姿。
会議の流れが一段落した所で、お茶を持って来ます、と、夢主(妹)は勝手場へ席をたった。
勝手場へ行くと、薬の準備をしている千鶴と遭遇した。
「うわ…石田散薬だ…」
千鶴の持つ盆を見て、夢主(妹)は舌を出して苦い顔をする。
「土方さんから頼まれて、今から広間へ持って行くの。平助君が飲むみたい…」
「それ…効くのかな。絶対マズイよね。平助どんまい。」
夢主(妹)は、千鶴と入れ違いに湯を沸かしてお茶の準備をしながらも、石田散薬の味のことを考えて、一人ぶんぶんと首を振ると、
絶対に怪我しないようにしよう…あれ飲まされるの嫌だ…
と、真剣に思った。
夢主(妹)が幹部全員分の茶を持って広間へ戻ると、出掛けていた近藤が戻って来ていた。
部屋中が意気揚々とした空気に包まれている。
何事?と思いながらも、茶を近藤に出してから、土方の側に行くと、
「長州の襲撃に備えて、俺達新選組も出陣することになった。お前も準備しとけ。」
と、表情こそ厳しいが、彼も意気揚々としているのだろう。
その声色には興奮が混ざっていた。
その勢いに、
「は、はいっ!!」
と、夢主(妹)は敬礼するかのように、背筋を伸ばして返事を返す。
こいつを戦場に連れて行くことに、まだ戸惑いがないと言ったら嘘になるが…
池田屋の時のように、俺のいない所で斬るも斬られるも…何かがあるのは正直我慢ならねぇ…
土方は、茶を幹部に配ってまわる夢主(妹)を見つめながらも、心内に覚悟を決めた。