第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
その時、す―――っと、襖が開く音がした。
「ただいま。あれれまだ寝てなかったんだ!」
「あ、夢主(姉)ちゃんおかえりなさい!」
「おかえりー」
夢主(姉)が帰ってきた。
もう夜は深い。
暑い~、と言いながら、夢主(姉)は袴を脱いで夜着に着替え始める。
「ねぇ、お姉ちゃん。京の雰囲気どお?様子おかしいって聞いたけど・・・」
千鶴に話を聞いたときのように、夢主(妹)はなるべく重くならないように夢主(姉)に聞く。
「んーなんかさぁ、京の人達って冷めてるっていうかなんていうか。まー近々何かありそうだよね。」
さらりと言ってのける夢主(姉)に、夢主(妹)と千鶴は顔を見合わせた。
お姉ちゃんがそう言うってことは、本当に近々起こるんだ・・・
どうしよう。
回避できるだけの知識が私にはない。
事が起こるのをまた待つだけになってしまう。
夢主(妹)の気持ちは沈んでいく一方だった。
どんどん暗く曇っていく夢主(妹)の表情を見た夢主(姉)は、独り言のように呟く。
「誰にも止められないよ。起こるものは起こるの。だからさ・・・」
夢主(妹)も千鶴も、静かな部屋にぽつりぽつりとこぼされる夢主(姉)の言葉に聞き入った。
「とりあえず元気でいようね?二人とも。」
夢主(姉)はにこやかにそう言うと、髪を下ろして丁寧に梳かしはじめた。