第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
仕事を終えて山崎さんに報告をしてから、千鶴ちゃんと夢主(妹)が待つ部屋へ戻れば、二人はすーすーと静かな寝息をたてて眠っていた。
二人の寝顔を見ると、なんだか不思議と心が和む。
その寝顔を見ながら、この前、斎藤さんに言われたことを思い出した。
「・・・その志はなんだ」
なんだろう。
自分でもよくわからない。
だって・・・
普通の生活をしていたはずなのに、どういうわけかタイムスリップ?なんだかわからないけど、こんな世界でいきなり生きることになって。
どうやら夢でもなさそうで。
だったら順応したもの勝ち!ここの皆と同じように行こう!
だなんて、はっきり言って軽く考えてた。
どうやらここの人達が守ろうとしてる幕府なんてものは、私がいた時代には無くて…
攘夷だとか尊皇だとかはよくわからないけど…
外国文化炸裂で。
きっとここに居たら先行き真っ暗なんだろうな…なんて不謹慎なことを考えたりもする。
池田屋で、夢主(妹)の姿を見た時、この子はきっと、いろいろ知識がある分辛いんだってわかった。
きっと死亡者が出たことを悔やんでるんだろうなって…そしてあれはほんのはじまりで、これから先もっと辛くなるんだろうなって。
でも、ここの人達の本気を見てたら、未来から来た小娘二人が、簡単に道筋を変えられるわけないって思った。
だから…
夢主(妹)が辛くならないように、私は情報を早く届けたい。
ほんとにたったそれだけのこと。
正直…真剣を振るう日が来るとは思わなかったけど。
時代が時代なら仕方ないじゃない。
地獄でもなんでも落ちてやるわ。
剣道やっててよかった!
…だなんて、私は本当に短絡的な思考回路なんだろうって思う。
でも考えすぎる性格だったら今頃きっとおかしくなってると思うから、こんな性格でよかった~なんて変に客観的に考えてみる。
そこまで考えたら、なんだか気持ちがスッキリして、急に眠気が襲ってきた。
暑さに夜着をはだけさせながらもすやすやと眠る夢主(妹)の胸元をきちんと直して、私も布団に入った。