第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
「い、いたっ…土方さん痛いです。」
我に返って夢主(妹)の腕を離す。
「悪い…」
「い、いえ!」
こないだの一件以来、夢主(妹)の様子がおかしい。
池田屋の騒動でしばらく気にしてなかったが…
仕事はキチンとこなしてるが、ふとした時に目の前にいない事が増えた。
まあ…しょうがねえか。
勢いとはいえ、意識させるような事を口走っちまった。
後悔は別にしてねえが、これはやりにくい。
「土方さん?あの…用事って?」
「ああ。明日出かけるから、その準備を…」
…それよりも
「平助とさっき…」
いやいやいや。
何を聞こうっていうんだ。
らしくもねえ。
余計に怯えさせるだけだ。
「平助と?ああ!さっき、隊士の人に、お稽古つけて欲しいって頼まれて、やってみたんです!」
急に目を輝かせて笑顔になった。
「おまえ…そういうことしてっから…」
いらんとこから好かれんだ…って言おうとして止める。
さっきから俺は何やってんだ。
こいつがそんなこと考えもつかねぇことはわかってる。
見守るって決めたのにな。
情けねえ。