第5章 涙言葉
誰から聞いても返ってくる答えはそれだけ、何なんだ…もっとこう、具体的に…ちゃんと癒芽に伝わる様に…出来ないのか?
「まったく…解らんな、何故…私がここまでして癒芽の気を惹こうとしなければいけないのだ…」
そんな事を思うものの、今日も私は癒芽が来るのを独りで待っている、恐らく癒芽が私の元から離れても一生待てるだろう。
たった独りの世界に現れた同じ独りの人間、そんな人間に心を惹かれて居る馬鹿げた吸血鬼。
そんな可笑しな独りぼっちの二人は御似合いだろうか、私があの…輝いて見える聖母の様な癒芽と、邪悪で腐りきってしまった魔王の私。
不安だ、…全ての癒芽に対する行いが不安で仕方がない…嫌われたくないと思う人間染みた気持ちが、愛しくて堪らないこの気持ちが、自分だけの操り人形にしてしまいそうなこの重い愛が。
歯車を狂わせてしまいそうだ。
コンコンコンッ…
嗚呼
私の愛しい生娘がまたやって来た。
必ず三回のノックと
甘い声が聞こえて来る。
「癒芽です、DIO様」
「入れ」
扉が音を立てて開くと共に優しい微笑みが
優しい匂いが部屋に拡がる。
「御早う御座います」
暗い外と似つかぬその言葉
さぁ
私と癒芽の楽しい時間が始まる時。