第2章 人形
初めてこの家に来てから、もう1週間が経とうとしていた。
わたしは毎日、来くんと律くんと魁くんとの4人で登校していた。下校は律くんと2人で。
来くんは弓道部、魁くんは美術部で帰りが遅いから。わたしと律くんは放課後はもう帰るだけ。
毎日、家の近くの電車から5分くらい揺られて、更にバスで15分。結構ハードだ。
『律くん、起きてー!もう朝ごはん出来たよ!』
理沙さんはフランスに戻っちゃったから、わたしが家事全般を引き受けている。
長男の真さんは料理が出来るらしいけど、お仕事でなかなか早く帰れない。他の兄弟に限っては、皆無だ。
なら、わたしが引き受けるしかない。
パパはほっとくと飢え死にしちゃう人だから、家事とかには慣れてる。孤児院でも、頑張って練習した。
毎日、6人分の朝ごはんと弁当の用意。
大変だけど、これくらいの方がやりがいがある。
『律くんっ!もう朝ごはんなくなっても知らないからね!』
扉越しに何度話しかけても返事はない。
仕方なく、がちゃりとドアを開ける。
「まだ眠い……」
『だーめーでーすー』
「チッ……鬼ババア」
『んな!?まだババアじゃないよ!!』
眠そうに目を擦りながらベッドから律くんが起き上がる。
これも、もう毎朝の恒例行事だ。