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君が笑う、その時まで

第13章 ランチタイム・クラッシュ


◆◇伊織視点
ものの見事なまでにぷくっと頬を膨らませ腰に手を当てる彼女、岸本紗綾はこの高校で初めての「友人」と呼べる存在だ。

 私よりもひと回り小さく、雰囲気としてはリスやウサギの小動物のそれに似ている。
 特に笑った顔は初対面の異性を射抜くが、悲しいかな、彼女は男性に苦手意識を持っていた。

 おまけに引っ込み思案な節もあってか、めったに自分から集団に入っていくようなこともない。

 そんな彼女と私は偶然仲良くなったのだが、今や私は彼女にたびたび声を掛けられるようになった。


 机の上の教科書やノートをしまい、入れ替わるようにして鞄の中から弁当箱を置く。

 すると、紗綾はなぜか困ったようにおどおどしていた。

「ん、どしたの?」

「実は今日は購買で済ませてって言われてお弁当持ってきてないの……」

 今にも泣きだしそうな表情になる、刹那。

「お願い!一緒に購買ついてって!」

 涙をいっぱい溜めた瞳に懇願されてはどうしようもない。

 私は重たい腰を上げた。
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